手紙
 
 

やあ、ひさしぶり。元気だった?
元気そうだね、安心したよ。ワタシ?私ワタシはあいかわらずだよ。変わろう変わろうと努力してもなかなか変われるもんじゃないね。

最近ね、いろいろな事が身の回りに起こってね。随分たくさんのことを考えたよ。
そうだね、いつも考えるのは、恋のこととかこれからのこと。くだらないなんて思わないでよ。いつもワタシは真剣なんだからさ。

このごろ自分がね。とても自分勝手だったって思ってるんだ。なんだか毎日たまらなくなってね。ジワジワと涙がでてくる。
ワタシはね、ほんとに自信がないんだよ。いつもいつも、誰かに認めてもらいたくて、人の意見に流されて生きてる。そうは見えない?アハハ。それはそう見えないようにしているからだよ。友達のまえではね。
独りの時は大丈夫なんだよ。なんでも自分で判断して自分で動くことができる。
でもね。誰か好きなヒトができて身も心も溺れてしまうと世界が一変してしまう。
不安で不安で、その人が自分から離れてしまわないか…それだけで頭がいっぱいになる。 そして過剰な愛情を求めてしまう。依存症って知ってる?うん、それと同じようなものだね。たくさん本を読んで自覚したよ。

うちには一匹ネコがいてね、とてもかわいいんだ。かわいくてかわいくて、たまにいじわるをしてしまうんだ。ネコも怒るんだけど、夜には仲直りをしていっしょの布団で眠る。
そのネコがこないだケガをしてね、病院に連れていったよ。ケガは大したことなかったけど痛そうだった。その時思ったんだよ。

「痛いと言えないこの子の代わりにワタシが痛くなればいいのに」

ねえ。

どうしてネコにはそう思えたのに、キミには思ってあげることができなかったんだろう?
どうしてキミの痛みやつらさをわかってあげようとしなかったんだろう。
そして自分の痛みだけを理解させようと思ってたんだろう。
それが辛かったからかな。
でも、あのときキミを失ってしまうこと以上に辛いことなんてあったんだろうか。

ア イ シ テ ル
ワタシが何度も繰り返した言葉。まるで呪文のようにね。
でもやっとわかったよ。愛なんてなかなか得られない。そんな簡単なものじゃない。
言葉に出すようなものじゃないんだね。
キミはそういうことを言わなかったよ、めったにね。その代わり行動で示してくれた。
そういうのって、なくしてから気づくんだね。自分でもイヤになるよ。

うちの中学高校はミッションスクールでね、毎朝毎夕礼拝をしてたんだ。
その時よくこの一節を読んだよ。とても有名だし短かったからね。適当に流しながら読んでたけどね。

「愛は寛容であり、愛は情深い。また、ねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない。不作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかない。不義を喜ばないで真理を喜ぶ。そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。愛はいつまでも絶えることがない」

この間久しぶりに読んで、泣いてしまったよ。口でそらんじることができるほどよく知っているのに、何一つ実行できなかった。理解すらできてなかった。ああ、すべて実行できるなんて思っていないよ。ワタシは完璧じゃないから。だけどこのうちの2つや3つくらい実行できていたらキミもワタシもあんなに傷つくことはなかったんだよ。

ゴメンね。未熟だったね。本当にゴメン。愛情をオモチャにしてしまったね。
たぶんキミとはもう逢えないかもしれないけど、キミが少しでもつらいことや悲しいことがないように祈ってる。

そして、ワタシもキミからもらったもの、教えてもらったことを大切にして生きていくよ。

 

さよなら。ありがとう。

 
 
<< Before + Menu + Next >>